宝石のカットの主な種類一覧をまとめて紹介。名前や意味についても解説 2025-08-09
「宝石には色々なカットがあるけど、どんな特徴があるのだろう」と考えたことはありませんか?
今回は、宝石のカットの主な種類について解説。名前の意味や特徴、人気のカットについてもご紹介します。
宝石のカットについて詳しく知りたい方は、是非、本記事をチェックして下さい。
宝石のカットの種類は大きく分けて2種類
宝石の原石は、宝石職人の手でひとつひとつカットされることによって、私たちが普段身につけているジュエリーになります。
宝石に合ったカットをほどこすことで初めて、原石が持つ輝きや透明感といった魅力を最大限まで引き出すことができるのです。
宝石のカットは、定番から変わり種まで様々なデザインがあります。
そのバリエーションは一説によれば何と数十万種類以上とさえ言われており、宝石のカットの奥深さを実感させられます。
しかし、一見膨大に思える宝石のカットのバリエーションも、大きく分けると以下の2種類に分類することができます。
・ファセットカット
・カボションカット
本記事では、ファセットカットとカボションカットの主な種類についてご紹介いたします。
ファセットカット
ファセットカットとは、角度が異なる数十以上の面を複雑に組み合わせた宝石のカット方法です。
ダイヤモンドなど透明〜半透明の宝石によく使われるカットで、宝石の輝きや美しさを増すために用いられます。
カットを施しているのは宝石の表面のみですが、複数の小さな面がランダムに光を反射・屈折することにより、宝石の内部から光を放っているかのように見えるのが特徴です。
ファセット(facet)は「切子面」や「小平面」などの意味があります。
宝石においては、カットでほどこされたひとつひとつの面をファセットと呼んでいます。
ファセットの数はカットの種類によって異なり、宝石の輝き方に影響します(多くのファセットカットは60前後〜70のファセットからできています)。
ちなみに、ファセットカットは歴史のある伝統的なカット方法としても有名です。
ファセットカットの誕生は16〜17世紀頃のヨーロッパまでさかのぼりますが、現代では、宝石のカットの多くを占める一大勢力にまで発展しています。
ファセットカットを細分化してみると主に以下の4種類に分けることができます。
・ブリリアントカット
・ステップカット
・ミックスカット
・その他のファセットカット
ここからは、それぞれのカットの特徴や魅力について解説します。
ブリリアントカット
ブリリアントカットは、ファセットカットのなかでも最も人気が高い定番カットのひとつです。
ブリリアント(Brilliant)は「光り輝く」という意味の形容詞で、ブリリアントカットを施した宝石が光り輝いて見える様子を表現しています。
ブリリアントカットの宝石を真横から見ると、逆三角形と台形を組み合わせたような形をしていることが分かります。
上部分(クラウン)は台形に、下部分(パビリオン)は逆三角形にカットされている点が特徴的です。
宝石が最も輝いて見えるカットのひとつとして、ブリリアントカットは様々な宝石に使われています。
定番から変わり種まで幅広いバリエーションがあるブリリアントカットですが、ジュエリーに使われることの多い人気のブリリアントカットとしては、以下の5種類が挙げられます。
・ラウンドブリリアントカット
・オーバルカット
・クッションカット
・ペアシェイプカット
・ハートカット
ラウンドブリリアントカット
ファセット数:57~58
ラウンドブリリアントカットは、ダイヤモンドに使われることが多い定番のカットの種類です。
イラストなどでよく見かけるダイヤ型の原型となるカットの形で、真上から見て円形(ラウンド)をしていることが大きな特徴です
。
ラウンドブリリアントカットを施したダイヤモンドは、他のカットのダイヤモンドとは異なり、「4C」という国際的な評価基準で宝石のグレードを測ることができます。
ダイヤモンドの4Cはカラット・カラー・カット・クラリティの4要素で構成され、カットは5段階評価で評価されています。
ラウンドブリリアントカットの歴史は意外と浅く、現在の形が確立されたのは20世紀に入ってからでした。
ベルギーの数学者トルコフスキーがダイヤモンドの光の反射・屈折について研究を重ねた結果、現在のラウンドブリリアントカットが誕生したと言われています。
ラウンドブリリアントカットのダイヤモンドが婚約指輪に選ばれる理由は、数学的に証明された揺るぎない美しさにあるのかもしれません。
オーバルカット
ファセット数:69
オーバルカットは、ラウンドブリリアントカットに次ぐ人気があるファセットカットの種類です。
オーバル(Oval)は「楕円」の意味で、名前の通り真上から見た姿が楕円形をしていることが特徴です。
オーバルカットの縦横比率は一般的に1:2が美しいと言われています(宝石の種類により異なる場合があります)。
縦長のフォルムが指を長く見せるため、オーバルカットは指輪などによく使われます。
また、オーバルカットは、カットの際にロスが生じにくいカットデザインとしても知られています(原石の形により異なります)。
そのため、同じサイズの2個の原石をラウンドブリリアントカットとオーバルカットにそれぞれカットした場合、オーバルカットの方がより高いカラット数の宝石になることが多いです。
オーバルカットの歴史は非常に長く、一説によれば原型となるカットは12世紀頃には既に存在していたとも言われています。
現在のオーバルカットは、18世紀頃に活躍した“ダイヤモンドの魔術師”カプラン氏によって発明されました。
クッションカット
ファセット数:約64
クッションカットは、古くから人気のあるファセットカットの種類です。
クッション(Cushion)という名前の意味通り、クッションカットの宝石を真上から見ると、クッションのように角が取れた正方形・長方形をしているのが特徴です。
別名を“オールドマインカット”や“ピローカット”とも呼ばれています。
クッションカットは、現代のブリリアントカットの原型となったカットとしても有名です。
ラウンドブリリアントカットが登場する以前の17〜19世紀頃のアンティークジュエリーには、クッションカットの宝石が好んで用いられていました。
また、世界で一番有名なクッションカットの宝石といえば、イギリス国王が代々受け継ぐ王冠「大英帝国王冠」にあしらわれている“カリナン2世”。
317.4カラットもある巨大なダイヤモンドで、世界4位の大きさを誇ります。
英国王室では、カリナン1世から9世まで、同じダイヤモンド原石からカットされた9つのダイヤモンドを所有しています。
ペアシェイプカット
ファセット数:71
ペアシェイプカットは、別名を“ドロップカット”とも呼ぶファセットカットの種類です。
ペア(Pear)という名前の意味通り、ペアシェイプカットの宝石は真上から見ると洋ナシのように片側がキュッとすぼまった雫型をしているのが特徴です。
存在感のある見た目が魅力的なペアシェイプカットは、ジュエリーの主役として人気があるカットです。
指輪やネックレスなど、様々な種類のジュエリーのメインストーンにふさわしいでしょう。
ちなみに、世界で最も有名なペアシェイプカットの宝石と言えば、英国王室が所有する“カリナン1世”。
先ほど紹介したカリナン2世と同じダイヤモンド原石からカットされた、ペアシェイプカットの巨大なダイヤモンドです。
カリナン1世は世界第2位のカラット数(530.2カラット)を誇り、歴代のイギリス国王が受け継ぐ王笏にあしらわれています。
ハートカット
ファセット数:約59
ハートカットは、ハートをモチーフとしたロマンチックなカットの種類です。
先ほどご紹介したペアシェイプカットのふくらんだ部分に切れ目が入ったようなハート型のデザインが特徴的です。
熟練の職人の技術と一定以上の大きさの原石を必要とすることから、ハートカットの宝石のジュエリーはその他のカットより値段が高くなりやすい傾向があります。
ダイヤモンドからカラーストーンまでハートカットは様々な宝石にほどこされていますが、実は、ハートカットには形状に関するルールはありません。
原石の形や職人の技量によって少しずつ異なるハート型をしているのが魅力のひとつです。
そのため、ハートカットの宝石は、この世にふたつと無い唯一無二の宝石と言えるでしょう。
ステップカット
ステップカットは、主にカラーストーンにほどこされることが多い定番カットの種類のひとつです。
ステップ(Step)は「階段」の意味で、ファセットが階段のように平行にカットされていることから名付けられました。
ステップカットをほどこした宝石を真下から見ると、細長いファセットが階段状にカットされて直線的に見えることが分かります。
ファセット数が少ないためブリリアントカットのように華やかな輝きはありませんが、落ち着いた輝きで宝石の色味を堪能することができます。
しかし、カットの特性上、宝石の内包物がブリリアントカットより目立ちやすい(内包物が無い場合は非常に澄んで見える)という特徴もあります。
ジュエリーに使われることの多い人気のステップカットとしては、以下の3種類が挙げられます。
・スクエアカット
・バゲットカット
・エメラルドカット
スクエアカット
ファセット数:57
スクエアカットは、ステップカットのシャープなファセットを楽しめる人気カットの種類です。
スクエア(Square)という名前の意味通り、鋭角な正方形のフォルムが特徴的なカットとなっています。
エタニティーリングにあしらうと、宝石を隙間なく敷き詰めたゴージャスなデザインが楽しめます。
ただし、角を落とさないデザインのため、ジュエリーデザインや宝石の性質によっては欠けや割れを引き起さないよう注意が必要です。
スクエアカットはステップカットの中でも極めてシンプルなデザインのカットです。
スクエアカットの宝石を真横から見ると、ステップカットの特徴でもあるピラミッドのような階段状のファセットを見ることができます。
ダイヤモンド、カラーストーンを問わず、宝石の透明度が引き立つカットでもあります。
また、シャープでクラシックな雰囲気を演出するスクエアカットは、アンティークジュエリーの宝石に広く使われたカットでもありました。
バゲットカット
ファセット数:約20
バゲットカットは、数多くのバリエーションがあるステップカットの中でも特に人気が高いカットの種類です。
バゲット(Baguette)とは、フランス語で「細長いパン」という意味。
その名前通り、バゲットカットの宝石を真上から見るとフランスパンのような長方形のデザインとなっています。
バゲットカットはステップカットの中でもファセット数が約20と少なく、落ち着いた輝きと宝石本来の色味や透明感を楽しめるカットです。
ジュエリーのメインストーンのほか、小粒の宝石はメインストーンを引き立てる脇石としても使われています。
エメラルドカット
ファセット数:50
エメラルドカットは、その名前の通り、エメラルドのために生み出された定番カットの種類です。
基本的な形はバゲットカットと同じ長方形ですが、唯一異なるところは“角を削っている”という点。
エメラルドは衝撃に弱く、カットの際に割れてしまうことも少なくありませんでした。
その欠点を克服するために、角を削って割れや欠けに強くしたエメラルドカットが誕生しました。
また、エメラルドカットは、エメラルドの結晶に沿って研磨できるカット方法でもあります。
そのため、エメラルドにエメラルドカットを施す場合は、宝石のロスを限りなく少なく抑えることができます。
現在では、デザイン性の高さから、エメラルド以外のカラーストーンやダイヤモンドにもほどこされています。
ミックスカット
ミックスカットは、ブリリアントカットやステップカットに次いで人気が高い定番カットの種類のひとつです。
ミックス(Mix)は「混ざる」という意味をもち、名前の通りブリリアントカットとステップカットを組み合わせたカットデザインとなっています。
とはいえ、宝石のどの部位にブリリアントカットとステップカットをほどこすかの明確なルールはありません。
宝石の上部分(クラウン)と下部分(パビリオン)がそれぞれブリリアントカットとステップカットのどちらかに分かれていれば、ミックスカットと認められます。
ジュエリーに使われることの多い人気のミックスカットとしては、以下の2種類が挙げられます。
・プリンセスカット
・ラディアントカット
プリンセスカット
ファセット数:約76
プリンセスカットは、正方形のラウンドブリリアントカットのような輝きが魅力的なカットです。
ダイヤモンドに施されることも多く、婚約指輪のダイヤモンドの形としてはラウンドブリリアントカットの次に人気です。
スクエアカットにも似ていますが、宝石の上部分(クラウン)はブリリアントカット、下部分(パビリオン)はステップカットで形成されています。
また、プリンセスカットは、ダイヤモンド原石の形状にとても近いカットデザインです。
そのため、同じサイズの2個のダイヤモンド原石をラウンドブリリアントカットとプリンセスカットにそれぞれカットした場合、プリンセスカットの方がより高いカラット数のダイヤモンドとなります。
ラディアントカット
ファセット数:約70
ラディアントカットは、エメラルドカットのシャープさとブリリアントカットの華やかさを合わせ持ったカットの種類です。
一見するとエメラルドカットに似ていますが、宝石の上部分(クラウン)はエメラルドカット、下部分(パビリオン)はブリリアントカットで形成されています。
ラディアントカットを施した宝石を真上から見ると、複雑に配置されたファセットによる放射状の輝きと透明感を堪能することができます。
また、ラディアントカットは、エメラルドカットでは見えやすかった宝石の内包物をブリリアントカットのファセットによって見えにくくする効果もあります。
エメラルドカットのアンティークな印象を受け継いでいるため、婚約指輪にラディアントカットのダイヤモンドを選ぶ方も多い人気のカットです。
その他のファセットカット
これまでご紹介したファセットカットの種類に当てはまらない、変わり種のファセットカットもあります。
その他のファセットカットの中でも人気が高いカットとしては、以下の2種類があります。
・ブリオレットカット
・ローズカット
ブリオレットカット
ファセット数:約84
ブリオレットカットは、360°の全方向を細かいファセットで囲まれた雫型のカットです。
ほとんどの場合透明度の高いカラーストーンにほどこされ、ダイヤモンドで見かけることは非常にめずらしいです。
ファセット面は縦長のひし形もしくは三角形で、光に当たるとミラーボールのようにキラキラとしたきらめきが楽しめます。
通常のファセット数は84前後ですが、ファセット数が多ければ多いほど宝石の輝きは強くなります。
「ブリオレットカット」という名前は、フランス語のBrilliant(輝き)やBrignolette(小さな干しプラム)などが由来と考えられています。
ジュエリーに使われた歴史も長く、現在のカットが確立したのは15世紀の頃と言われています。
ブリオレットカットはヴィクトリア時代にアンティークジュエリーとして人気を博し、現在もネックレスやピアスなどに使われています。
また、ブリオレットカットは、カット工程に技術を要する難易度の高いカットとしても知られています。
その上、制作にはカラット数の高い大きな原石が必要となるため、ブリオレットカットの宝石は高い値段で取引されることが多いです。
ローズカット
ファセット数:約24
ローズカットは、ローズ(Rose)という名前の意味通り、薔薇のつぼみのような可愛らしい形をしているのが特徴。
現在のブリリアントカットの原型のひとつとなったカットの種類です。
ローズカットの宝石を横から見ると、底が平らのドーム状になっており、すべてのファセットが三角形をしていることがわかります。
ブリリアントカットのような華やかな輝きはありませんが、ファセットのツヤ感と落ち着いたきらめきを楽しむことができます。
また、ローズカットの歴史は古く、16世紀頃までさかのぼります。
当時のカットバリエーションの中ではローズカットはファセット数が多く、キラキラとした輝きが貴族の間で大流行しました。
今でも、アンティークジュエリーなどでローズカットの宝石を見ることができます。
カボションカット
カボションカットとは、表面にツヤが出るように研磨したカット方法です。
これまでご紹介してきたファセットカットと双璧をなすカットの種類で、すべてのカットはファセットカットもしくはカボションカットに分類されます。
カボションカットの特徴は、何と言っても、幾何学的な形状のファセットカットとはまったく異なる丸みを帯びた形状です。
底を平面にした半球型のものはシングル・カボション、完全な球体に磨きあげたものはダブル・カボションと呼ばれます。
カボションカットは、ルビーなど透明〜半透明の宝石からターコイズなど不透明の宝石まで、あらゆる宝石に施されます。
中には、カボションカットを施すことでまれに特定の視覚効果(スター効果など)が出現する宝石もあります。
- スター効果とは
- 宝石の内包物により、カボションカットを施した宝石の表面に星のような2本〜6本の光の筋が浮かび上がる現象。ルビーやサファイアなどに起こる。
カボション(Cabochon)という名前の由来は、古いフランス語で「頭」などの意味がある“Caboche”だと言われています。
現代では、カボションを略してキャブ(Cabs)と呼ぶこともあります。
また、カボションカットは、宝石のカットの中では最も歴史のあるカットとして知られています。
ファセットカットが人気となる以前の時代では、宝石のカットといえばカボションカットが主流でした。
そのため、アンティークジュエリーの多くにはカボションカットの宝石があしらわれています。
宝石のカットは知れば知るほど奥が深い
ここまで、宝石の主なカットの種類について、特徴や名前の意味などをご紹介しました。
しかし、ここでご紹介したカットは世界中にあるカットのうちのほんの一部。
宝石の種類によってもカットの表情は異なるため、ご自分の好きな宝石とカットの組み合わせを探してみるのも楽しいかもしれません。
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